夏着物とは?種類や着る時期、浴衣との違いをわかりやすく解説

夏着物とは、暑い季節でも快適に着られるように仕立てられた着物の総称です。

一般的な着物に比べて通気性が高く、見た目にも涼やかな印象を与えるため、日本の夏ならではの装いとして親しまれています。

夏祭りや花火大会で着用する浴衣とは異なり、夏着物は観劇や食事会、お茶会、結婚式など幅広いシーンで着用できます。

季節感を大切にする和装文化の中でも、夏着物は日本人の美意識や暮らしの知恵が詰まった特別な存在です。

この記事では、夏着物の特徴や種類、着用時期、浴衣との違いからコーディネートのポイント、お手入れ方法まで詳しく解説します。

夏着物とは

夏着物の特徴

夏着物とは、主に6月から9月頃に着用される着物のことを指します。

一般的な袷(あわせ)の着物は表地と裏地を重ねた仕立てになっていますが、夏着物は裏地を省いた単衣仕立てや、透け感のある薄物仕立てが中心です。

そのため風通しが良く、蒸し暑い季節でも比較的快適に過ごせます。

また、透け感のある生地や涼しげな色柄を取り入れることで、実際の温度だけでなく視覚的にも涼を感じさせるのが特徴です。

和装ならではの季節感を楽しめる点も、多くの人に愛されている理由といえるでしょう。

夏着物が生まれた理由

日本の夏は高温多湿であり、裏地の付いた袷着物では暑さを感じやすくなります。

そのため、少しでも快適に着物を楽しめるように考案されたのが夏着物です。

絽や紗といった織物には、生地に細かな隙間を設ける工夫が施されており、風が通りやすい構造になっています。

見た目にも透け感があり、暑い季節にふさわしい軽やかな印象を演出できます。

夏着物を着る時期

6月・9月は単衣の着物

6月と9月は、季節の変わり目にあたるため単衣の着物が適しています。

単衣は裏地がないため袷よりも軽く、気温が高くなり始める初夏や、残暑が続く初秋に快適に着用できます。

近年では気温の上昇に伴い、5月後半から単衣を取り入れる人も増えています。

7月・8月は薄物の着物

本格的な夏を迎える7月から8月には、絽や紗、麻などの薄物を着用します。

生地そのものに透け感があり、風を通しやすいため、夏着物らしい涼やかな着姿を楽しめます。

見た目にも爽やかで、夏の和装の代表格といえるでしょう。

近年は着用時期が柔軟になっている

従来の着物には季節ごとの明確なルールがありましたが、近年は気候変動の影響により考え方が変わりつつあります。

5月でも真夏日になることがあり、反対に9月でも厳しい残暑が続くケースも少なくありません。

そのため、現在では暦だけでなく実際の気温体感温度を重視して着物を選ぶ人が増えています。

夏着物の種類

絽(ろ)

絽とは

絽は夏着物を代表する織物の一つです。

もじり織りと呼ばれる技法によって一定間隔に透ける部分が作られており、縦方向に涼しげな模様が現れます。

上品な透け感がありながらも格式を保てるため、幅広い場面で着用されています。

絽の魅力

絽の最大の魅力は、夏らしい涼やかさとフォーマル性を兼ね備えていることです。

透け感がありながらも絹特有の光沢感や高級感があり、訪問着や付け下げ、色無地などにも多く用いられています。

夏着物の中でも特に格の高い素材として扱われることが特徴です。

絽を着るシーン

絽は結婚式やお茶会、お宮参り、式典、格式ある会食などのフォーマルシーンに適しています。

夏場でもきちんとした装いが求められる場面では、絽の着物が選ばれることが多くあります。

紗(しゃ)

紗とは

紗は絽と並ぶ代表的な夏用の織物です。

絽よりも透け感が強く、生地全体が軽やかな印象を持っています。

風通しが良いため、真夏でも比較的快適に着用できます。

紗の魅力

紗は空気を含むような軽やかな着心地が魅力です。

透け感によって涼しげな印象を演出できるため、夏らしいおしゃれを楽しみたい方に人気があります。

フォーマルというよりは、おしゃれ着としての側面が強い素材です。

紗を着るシーン

ホテルランチや観劇、美術館巡り、食事会、カジュアルパーティーなどに適しています。

上品さを保ちながらも、肩肘張らないお出かけ着として活躍します。

麻・上布

麻の着物とは

麻は夏着物に最適な天然素材として知られています。

吸湿性と速乾性に優れているため、汗をかいても肌に張り付きにくく、さらりとした着心地を維持できます。

特に暑さが厳しい地域では重宝される素材です。

上布とは

上布とは高級麻織物の総称です。

代表的なものには越後上布や宮古上布、八重山上布、能登上布、近江上布などがあり、それぞれ長い歴史と伝統技術によって作られています。

自然素材ならではの風合いと高い品質から、多くの着物愛好家に支持されています。

麻着物を着るシーン

麻や上布の着物は、街歩きや観光、カフェ巡り、美術館巡り、ランチ会などに向いています。

高価なものであっても基本的には普段着やおしゃれ着として位置付けられており、気軽なお出かけシーンで楽しむことができます。

夏着物と浴衣の違い

着付けの違い

浴衣は肌着の上から直接着用するのが一般的ですが、夏着物は長襦袢を着た上から着用します。

そのため、夏着物の方がより正式な和装として扱われています。

素材の違い

浴衣には綿や麻などの素材が使われることが多く、カジュアルな装いとして楽しまれています。

対して夏着物には絽や紗、正絹、上布などの素材が用いられ、より上品で格式のある印象を与えます。

帯の違い

浴衣では半幅帯や兵児帯を合わせることが一般的です。

一方、夏着物には名古屋帯や袋帯などを合わせるため、全体としてよりフォーマルなコーディネートになります。

着用シーンの違い

浴衣は夏祭りや花火大会などのイベント向けの装いです。

夏着物は観劇や食事会、お茶会、同窓会、結婚式など幅広い場面で着用可能で、TPOに合わせて着こなすことができます。

夏着物の選び方

TPOに合わせて選ぶ

夏着物を選ぶ際は、まず着用するシーンを考えることが大切です。

結婚式や式典などのフォーマルな場では絽の訪問着や色無地が適しています。

一方、普段のお出かけや観劇などであれば紗や麻の着物でも十分に楽しめます。

色で選ぶ

夏らしさを演出するなら、水色や白、薄紫、淡いグリーンなどの寒色系カラーがおすすめです。

見た目に清涼感が生まれるため、季節感のある着こなしを楽しめます。

柄で選ぶ

夏着物では季節感を意識した柄選びも重要です。

朝顔や金魚、流水文、花火、トンボ、ススキなどの夏を連想させるモチーフは人気が高く、涼やかな印象を演出できます。

柄に季節感を取り入れることで、より洗練された和装コーディネートに仕上がります。

夏着物に合わせるインナー

肌着は綿や麻がおすすめ

夏の和装では汗対策が欠かせません。

肌着には吸湿性に優れた綿や麻素材を選ぶことで、汗による不快感を軽減できます。

特に麻素材は乾きが早く、暑い季節に適しています。

夏用長襦袢を選ぶ

長襦袢にも夏向けの商品があります。

絽や紗、麻などの素材で作られた夏用長襦袢を選ぶことで、着物全体の通気性が高まり快適に過ごせます。

ステテコで透け対策

夏着物は透け感があるため、インナー選びも重要です。

和装用ステテコを着用しておくと透け対策になるだけでなく、汗によるべたつきも軽減できるため快適に過ごせます。

夏着物に合わせる帯

カジュアルシーン

普段のお出かけや街歩きには、半幅帯名古屋帯博多帯などが人気です。

締めやすく軽快な印象を与えるため、気軽な夏の和装に適しています。

セミフォーマルシーン

観劇や食事会などでは、絽塩瀬帯絽綴帯を合わせることで上品な印象を演出できます。

夏らしい透け感を持ちながらも、きちんと感を保てるのが魅力です。

フォーマルシーン

結婚式や格式ある席では、絽や紗の袋帯を合わせるのが基本です。

着物との格を合わせることで、品格のある装いが完成します。

夏着物に合わせる小物

涼しく着るための小物

夏向けに作られた和装小物を取り入れることで、着心地が大きく向上します。

メッシュ帯板メッシュ伊達締め、麻帯枕、ヘチマ帯枕などは通気性に優れており、夏の着付けを快適にしてくれます。

季節感を演出する小物

帯揚げや帯締めにも夏仕様のものがあります。

絽や紗の帯揚げ、レース帯締め、ガラス玉をあしらった帯締めなどを取り入れることで、より涼やかなコーディネートを楽しめます。

足元も夏仕様に

足元も季節感を演出する大切なポイントです。

麻足袋や綿麻足袋、レース足袋などを合わせることで、見た目にも爽やかな印象を与えられます。

夏着物を快適に着るための暑さ対策

着付け前に汗対策をする

着付けはできるだけ冷房の効いた部屋で行うのがおすすめです。

また、汗をかきやすい首元や背中、脇などに制汗剤を使用しておくと、着崩れや不快感を軽減できます。

和装専用インナーを活用する

吸汗速乾機能を備えた和装インナーを着用すると、汗ジミや蒸れ対策に役立ちます。

近年は夏向けの高機能インナーも多く販売されており、快適性を大きく向上させてくれます。

外出時は涼感グッズを活用する

夏の外出時には日傘扇子うちわなどを活用すると快適です。

さらに携帯扇風機や冷感タオルなどを併用することで、暑さによる負担を軽減できます。

夏着物のお手入れ方法

着用後は陰干しをする

着用後の着物には汗や湿気が残っています。

脱いだ後はすぐにたたまず、風通しの良い場所で陰干しをして湿気をしっかり飛ばしましょう。

汗汚れは早めに対処する

夏着物は汗による汚れが付きやすいため注意が必要です。

放置するとシミ変色の原因になることがあるため、気になる汚れがあれば早めに専門店へ相談することをおすすめします。

保管方法にも注意

保管時にはたとう紙に包み、防虫剤を入れたうえで湿気の少ない場所に収納しましょう。

適切な環境で保管することで、美しい状態を長く維持できます。

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